松本フミ「冨士戒壇建立書」佐藤宏・編 第二書

フミいろは歌解釈第2書冒頭も佐藤の注解から入っていくが、佐藤はフミの主宰する教団が静岡県富士郡北山村(現在の富士宮市北山)にあったことを記す。
教団名は前出と異なり「宗教法人明光院」となっている。前出の教団名は任意団体のころのものか、あるいはどちらかが誤記か。
現富士宮市北山に教団本部を構えていた理由は、冨士戒壇建立のためだという。
「宗教法人明光院」についても検索して出てこない。やはりフミの死後衰退し現在はその後継教団も無いのだろう。

そしてフミの第2書冒頭は「明光界真よ、」から始まっている。そして史跡調査の最中に起こる自然現象が、戒壇建立のための事業を神仏が喜んでいるものと云う。

調査の合間に宿泊する宿では、フミは月に向かって唱題していたことを佐藤は記している。
その時に起こる自然現象や怪奇現象を、今では知るものは佐藤一人となったとも。他の信者らは本書出版のころには鬼籍に入っていたのだろう。
しかし「知るものが一人」とはいかにも胡散臭い。一人になってしまえば、どんな嘘も本当のように書くことは可能だ。

またフミは第2書の中で「六月夏至に出る辰星を秘として日興上人が示し」と、意味不明ながら日興の名を挙げている。
思えばフミの活躍した時代、北山本門寺は貫主を出すことができず、日蓮宗信行道場教頭で霊断師でもあった片山日幹の時代となり、境内が雑乱勧請した時代である。
たしかフミも使用する神代文字やその象徴となる石像もあったように記憶する。
日幹は京都要法寺まで行き興門派の相伝を受けてきた実直な貫主でもあったが、霊断師会の影響も看過できない面があった。

続いてフミは、中山の加持祈祷の批判をさらっと記し、再び「九素(クス)の木の板曼陀羅」に関してふれる。
陀羅尼品はヘブライ語・アイヌ語であるとも言い切っている。
「寿量品秘沈の文底」言葉の並びを変えて読み、「文(ふみ)給ふべき戒壇なりである。」と語呂合わせしている。

「始皇は左道だ。味を見ておかぬと日興上人に申訳がたたなくなる。」と再び日興の名が。
「又義口伝に」と御義口伝を引用するところからも、やはりフミは思想的に日興門流寄りであったように感じる。

佐藤の注解が入り、フミのいろは歌の解釈が示される。頁の境目のため最終行が崩れてしまっているが画像で添付する。(詳しくはX・旧Twitter参照)スキャンしきれなかった最終行は「ゑひもせす」。
7文字1行で6行、それに字余りの5字を足す。足した5文字の最終文字と6行の最終文字をとって「とかなくてしす」を拾う。

第2書も後半にさしかかると「本尊曼陀羅」との表現が見られ、フミは漫荼羅本尊思想家だったことがわかる。ゆえに自身も曼陀羅を書いて信者に授与したのだろう。
「伊勢神宮は敗戦までの使命であって、昭和二十年八月十五日で御用済みとなったのである。」と戦前であれば不敬罪となる記述もある。
この点は天照大神宮を建設した日幹と、考えが異なるのであろうか。

そしてクリスチャンに呼びかける「汝等が宇宙最高の神の子として信じているキリストは人皇十六代応神天皇である。」と。
しばしキリスト関連の薀蓄もどきを書き連ね、再び「日興上人が示す如く夏至の星を示し」と記す。いったい何の意味であろうか。

「ぺテルに白い石を残して二千余年行方不明の十宗族も日本に来ていることは、大石寺という看板でも分かる。」これは「白い石」と「大石」をかけているのだろう。

日蓮は久遠を示し、旧約聖書はシオンの山に秘したと言うが、これが九音と四音の意味らしい。
世界の文字の原型は神代文字・縄文文字からできているとも。アルファベットもその一つという。

「法華経に示された理の三千」との記述を見ると、フミは日蓮あるいは天台系の釈を通して法華経を見ており、羅什訳でも十如是のみで三千は「大千世界」としてのみ説かれることを、法華経そのものの記述に忠実ではなかったようにとらえていたものとみえる。

最後に佐藤は「ここまで読まれた人は益々疑問ばかりになったことと思います。」「八書まで同じことの繰り返しになります。」と綴る。
よって私はフミの思想の理解は考えず、フミや佐藤の記したことに、大石寺や本門寺(日興門流)がどの程度関与、あるいはフミらが関心を持っていたかを中心に見ていきたい。





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大本順成

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